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大分市佐賀関の大規模火災で、複数の場所に点在する空き地や耐火性のある建物が、さらなる延焼の拡大阻止に一定の効果があったとみられることが17日、大量の航空写真を基にした高精細3次元(3D)画像を見た専門家の分析で分かった。18日で発生から1カ月。住宅密集地の火災対策を全国的に進める上で有用なデータだ。
(2025年12月17日に公開しました)

空き地、延焼防止に効果
3Dから判明、住宅密集地対策で専門家

3D画像は、ヘリコプターで上空から撮影した1781枚の写真を基に、共同通信と一橋大の谷田川達也(やたがわ・たつや)准教授(コンピューターグラフィックス)が合同で作成した。誰でも自由な視点で見ることができ、全体を把握しやすいため、啓発や教育にも役立つと見込まれる。

火災発生翌朝の11月19日午前8時40分ごろから同9時20分ごろまで、被災地をヘリコプターで撮影。大量の写真からデータを抽出し、3Dガウシアン・スプラッティング(3DGS)という最新のデジタル技術を使って立体化した。生成人工知能(AI)は使用していない。

■ 再生 ■
初期画面では、3D画像は約1分間のアニメーションとしてご覧になれます。再生中に3D画像自体をクリックするとアニメーションが止まり、自由に視点を動かせるようになります。その後は、左下の三角のマークを押すと再び自動で動き出します。

■ 回転 ■
左クリックをしながらマウス、またはトラックパッドを動かすと、視点が回転します。スマートフォンの場合は1本指で画面をなぞると回転します。

■ 移動 ■
右クリックをしながらマウス、またはトラックパッドを動かすと、視点が移動します。スマートフォンの場合は2本指で画面をなぞると移動します。

■ 拡大 ■
マウスのホイール操作、またはトラックパッドの2本指操作で、画像が拡大、または縮小します。スマートフォンの場合はピンチ操作で拡大、縮小します。

■ 全画面 ■
右下の四角のマークを押すと、全画面表示に切り替わります。「Esc」キーを押すと元に戻ります。

分析した東京大の広井悠(ひろい・ゆう)教授(都市防災)によると、延焼した一帯のうち少なくとも4カ所で「焼け止まり」の要因が推定できた。付近には空き地や道路、耐火性がありそうな建物が点在し、延焼を止めたり遅らせたりする防火帯の役割を果たしたとみている。

東京大の広井悠教授(都市防災)

広井教授は「それぞれの場所で焼け止まりをした要因は、風向きや風速、放水の有無なども影響しており複合的で異なる」と説明した上で「鉄筋コンクリート(RC)造など耐火性がある建物は燃えにくいだけではなく、隣接した建物への延焼リスクが低減するメリットもある。空き地や道路があれば消火用のホースを効果的に入れることができる」と話す。

例えば、西側に耐火性が高い住宅があったことが、消火に有利な風上だったと考えられることと合わせて、延焼拡大の防止に効果的だったとした。

3D画像では、燃え残った場所を越えた「飛び火」で焼損したとみられる建物も確認された。

総務省消防庁によると、火災は11月18日午後5時43分に通報があり、1人が死亡、1人が負傷。187棟が焼損、約4万8900平方メートルが焼失した。海を隔てて約1・4キロ南東の離島・蔦島(つたじま)にも飛び火した。出火原因は分かっていない。

動画 東京大の広井悠教授が3D画像を分析

市街地火災、生かせ教訓
専門家「どこでも起こる」

大分市佐賀関の大規模火災で、航空写真を基にした高精細3次元(3D)画像を見た元東京消防庁麻布消防署長で、公益財団法人市民防災研究所理事の坂口隆夫さんは、空き地など住宅密集地の火災対策を考える手がかりがあると指摘した。「条件が重なれば、大規模火災は全国どの地域でも起こり得る」。火災に強いまちづくりを目指し、今回の教訓を生かすよう促した。

「扇状に延焼が広がった様子が詳細に分かる」。大規模火災発生の翌日、白煙が上がる市街地を捉えた3D画像を見ながら坂口さんは指摘した。

木造住宅が密集し、空気は乾燥、強風下。こうした条件がそろえば、今回の災禍のようなことが、ほかの地域にもたらされる恐れは十分あるという。

元東京消防庁麻布消防署長で公益財団法人市民防災研究所理事の坂口隆夫さん

今回被災した地域について、共同通信は2019年にも上空から撮影している。

19年の写真を見た坂口さんは「朽ちたような適切に維持管理されていない空き家が多い印象を受ける」と指摘。「屋根が壊れた古い家屋に火の粉が入り、延焼につながった可能性がある」

老朽化した空き家が各地で放置された現状を改める必要があるとし、「解体費用もかかる。所有者や遺族だけに任せても解決しない。法改正も含め、国や自治体が関与して取り組む必要がある」と提言した。

「撤去して更地になれば延焼を遮断する空間が生まれ、消防も活動できる。建物が燃えにくい構造なら延焼を遅らせ、避難や消火の時間を稼げる」

動画 2019年と2025年の比較

坂口さんは、3D画像から推測した焼け止まりの要因として、
①空き地 ②耐火性の高い建物 ③道路 ―などを挙げる。過去には、1923年の関東大震災や95年の阪神大震災などの被災地で、大規模火災の教訓を踏まえ、道路幅の拡幅などの復興事業が実施されてきた歴史がある。

また、長年火災に向き合ってきた経験から、人口減少や高齢化が進む地域の消防力低下も懸念している。出火の認識や初期消火が遅れれば、それだけ延焼のリスクは高まるからだ。

こうした現状で打つべき対策として「道の幅を広げ、空き地を確保し、燃えにくい建物にしていく。3D画像ではこうした要素で守られた建物があることが分かる。防災の進むべき方向性を示している」と強調した。

動画 坂口隆夫氏が分析

3D画像 | 3次元で表された立体感のある画像データ。Dは次元という意味のDimension。医療、教育、建築、エンタメなどさまざまな分野で活用される。2023年に、よりリアルな表現ができる3Dガウシアン・スプラッティング(Gaussian Splatting)というデジタル技術が発表された。 検証や防災対策、記録継承などのほか、大規模災害の直後に公開できれば、被災状況の早期把握にも活用できそうだ。

 谷田川准教授は「3DGSは従来の技術に比べ写真に近い忠実な表現ができる。今回のような3Dが防災などに役立てられれば」と語る。 3Dはデジタル教材として教育分野でも活用が進んでおり、東海大の柴田隆史(しばた・たかし)教授(人間工学)は「立体的に見せることで起伏や位置関係、スケール感が分かりやすくなる。写真や映像では気付かないポイントにも着目できる」と話した。

3D画像作成の手順
ドキュメンタリー

動画  【3Dは語る】生かせ教訓ー高精細3D画像で見えた特徴と都市防災の課題

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