THE MONSTER
井上尚弥

ボクシングの世界スーパーバンタム級主要4団体タイトルマッチが5月4日、米ラスベガスのTモバイル・アリーナで行われ、統一王者の井上尚弥(大橋)が世界ボクシング協会(WBA)同級1位の挑戦者ラモン・カルデナス(米国)を8回TKOで下し、4団体の王座防衛に成功した。米国では重量級が人気で、軽量級の日本人王者がメインイベントを務めるのは異例。井上は2回終盤に自身の打ち終わりに左を食らってダウンしたが、慌てなかった。大振りのフックを冷静に見切って立て直した。右強打を重ねて突破口を開き、7回終盤にダウンを奪い返した。動きが鈍った相手に圧力をかけ続け、8回にラッシュしたところで主審がストップした。カルデナスは果敢に打ち合ったが、パンチの威力で劣った。

(AP=共同)

(カルデナスは)
非常にタフな相手だった。

(AP=共同)

2回にダウンを喫し

ボクシングはそんなに甘くないものだと痛感した。

(AP=共同)

ニューヨークとサウジアラビアで連日行われた大型興行の〝大トリ〟で

自分が一番盛り上げることができたと思う。

NAOYA INOUE
Battle Record
 30 wins
 27 KOs
KOs 90 %

井上尚弥のプロフィル

1993年4月10日生まれ
神奈川県座間市出身
身長165cm
神奈川・相模原青陵高時代にアマチュア7冠。2012年10月プロデビュー。14年4月にWBCライトフライ級、同年12月にWBOスーパーフライ級、18年5月にWBAバンタム級王座獲得。19年11月にワールド・ボクシング・スーパーシリーズ優勝。22年12月に世界主要4団体王座統一。23年7月にスーパーバンタム級2団体王者となり、4階級制覇。同年12月に4団体王座統一。右ボクサーファイター。

井上尚弥の世界戦成績

ライトフライ級[2戦全勝]
2014年4月 エルナンデス メキシコ 6回TKO
14年9月 サマートレック タイ 11回TKO
スーパーフライ級[8戦全勝]
14年12月 ナルバエス アルゼンチン 2回KO
15年12月 パレナス フィリピン 2回TKO
16年5月 カルモナ メキシコ 判定
16年9月 ペッチバンボーン タイ 10回KO
16年12月 河野公平 日本 6回TKO
17年5月 ロドリゲス 米国 3回KO
17年9月 ニエベス 米国 6回TKO
17年12月 ボワイヨ フランス 3回TKO
バンタム級[9戦全勝]
18年5月 マクドネル 英国 1回TKO
18年10月 パヤノ ドミニカ共和国 1回KO
19年5月 ロドリゲス プエルトリコ 2回TKO
19年11月 ドネア フィリピン 判定
20年10月 モロニー オーストラリア 7回KO
21年6月 ダスマリナス フィリピン 3回KO
21年12月 ディパエン タイ 8回TKO
22年6月 ドネア フィリピン 2回TKO
22年12月 バトラー 英国 11回KO
スーパーバンタム級[6戦全勝]
23年7月 フルトン 米国 8回TKO
23年12月 タパレス フィリピン 10回KO
24年5月6日 ネリ メキシコ 6回TKO
24年9月3日 ドヘニー アイルランド 7回TKO
25年1月24日 金芸俊 韓国 4回KO
25年5月4日 カルデナス 米国 8回TKO
father
father

小学校1年生の時、父にボクシングを始めたいと伝え、
厳しさを説かれた時

大丈夫。
強くなるから。

ボクサー人生は自宅の一室から始まった。アマチュアで競技を経験した父真吾さんの練習場で、小学1年でグローブを手にした。弟拓真(大橋)とともに後にジムを開く父の厳格な指導で基礎をたたき込んだ。
  神奈川・相模原青陵高時代、アマ7冠に輝いた。ジムの先輩で世界3階級制覇した八重樫東さんは「高校生の時には化け物になっていた」と拳を交わした当時を思い起こす。
  以前行った体力測定では握力など数値が成人男性の平均程度だった。井上尚は「身体能力は低いですよ」と笑う。一方で強みは「空間把握能力」とし「パンチを当てる距離に苦労したことがない。すんなり打てることが打撃の強さ、スピードにつながるのだと思う」と自負をのぞかせる。
  今でもトレーナーは父に任せている。「家族で一からつくり上げたボクシング。自分はエリートというより、たたき上げ。家族でやり遂げないと意味がない」と言えば、父も「(プロ転向時に)『どうしてもお父さんじゃないとやりたくない』と言ってくれた。感じるものがあった」と話し、強い絆をうかがわせた。(2017年1月)

大橋会長

(大橋ジム提供)

2012年7月
19歳で受けた異例の公開プロテストでは現役日本王者を圧倒し、
難なく合格。ジムの大橋秀行会長が期待を込め

世界に出て
怪物からMonsterになる。

WBC

Light Flyweight
Title Match

2014年4月6日
プロ6戦目で世界王座獲得

小さい頃からの夢を
絶対にかなえようと
思って戦った。

WBO

Super Flyweight
Title Match

2回KOで敗れた過去ダウン経験のないナルバエス

歴史的な王者に
なるだろう。

WBA

Bantamweight
Title Match

(マクドネル戦を前に)自身の一番の特長は

空間把握能力。
これまで試合でパンチを当てる距離に苦労したことがない。

World Boxing Super Series

WBA

Bantamweight
Title Match

パヤノに1回1分10秒、
衝撃のKO勝ち

試合は完璧。百点。

the ring

2018年12月6日(表紙はリング誌提供)
井上尚弥が日本選手単独で初めて、伝統のある米専門誌「ザ・リング」の表紙を飾った。「自分のスタイル、結果が認められてきたのだと思う。日本のチャンピオンの中で一つ抜けたステージに行きたいと前から思っていたのでうれしい」と喜んだ。
2019年2月号の表紙で「日の丸」をイメージした赤と白が基調。愛称「モンスター」の文字も並び、インタビューを基にした特集が組まれた。
1922年創刊のザ・リングの表紙は元世界ヘビー級統一王者マイク・タイソン(米国)ら世界的スターが飾ってきた。その仲間入りに、同誌のダグ・フィッシャー編集長は「世界中に認知されるべき偉大なチャンピオン」とコメント。所属ジムの大橋秀行会長は「日本人が初めて認められた。すごい快挙を成し遂げた」と話した。  

World Boxing Super Series

WBA IBF

Bantamweight
Title Match

ロドリゲスを2回TKOで一蹴

強さに満足していない。 まだ底が見えていない。

World Boxing Super Series

WBA IBF

Bantamweight
Title Match

2回に左フックを浴び右目上をカット。
右目の焦点が合わなくなり、流血もあった。

世代交代といえる内容
ではなかった。

日本人初の3団体統一戦を見据え

まだ見たことのない景色があるし、 見られると思っている。

世界から見た
モンスター

davis

ジャーボンテイ・デービス
(米国)

デービスは2022年4月、インターネットメディア「ファイトハブTV」に井上と対戦する可能性についてこう語っていた。「日本のアイツは誰だった?イノウエ?そうだ」「(自分とやれば)面白い戦いになるだろう。そしてテクニカルなものにね。だが彼にとってオレは(体が)大きすぎるんじゃないかな」
(写真はゲッティ)

pac

マニー・パッキャオ氏
(フィリピン)

【ネットメディアのLittle Giant Boxingに】 「尚弥のことは好きだ。以前日本で彼を教えたこともある。さらに階級を上げることを考えているなら彼のトレーニングを指導したい。(スティーブン・フルトン=米国=戦は)素晴らしいパフォーマンスだった。速さ、俊敏性、強さもあった」
【井上尚―フルトンにX(旧ツイッター)で】 「井上はパンチに込められた大きなパワーと優れたスピードの持ち主。特別なボクサーだ」

tyson

マイク・タイソン氏
(米国)

【テレンス・クロフォード(米国)―エロール・スペンス(米国)の試合前に、この一戦の勝者と、スティーブン・フルトン(米国)に勝った井上尚弥のどちらがパウンド・フォー・パウンドにふさわしいかを問われ、ネットメディアのFight Hub TVなどに】 「自分の意見では、日本のボクサー(井上尚)が世界最高のボクサーだ」

dug

ダグラス・フィッシャー氏

PFPで日本初の1位になった井上について「天性の才能とスキル、テクニック、そして身体能力が絶妙にブレンドされている。これまでで最も手ごわい相手をダイナミックに爆発力を発揮して破った」
PFP1位の座を守るためには「議論の余地のない存在となり、圧倒的な形で勝ち続ける必要がある」「スーパーバンタム級でも、まだ『モンスター』になれると思う」 (2022年6月、共同通信による電子メールでのインタビューで。写真は本人提供)

WBA IBF WBC

Bantamweight
Title Match

今回はドラマにならない。
一方的に、触れさせずに
終わる。

WBA IBF WBC WBO

Bantamweight
Title Match

バンタム級世界4団体王座統一戦を前に

自分はどんな
ボクシングでもできる。

バンタム級世界4団体王座統一戦から
一夜明け

全てが通過点。
ゴールは決めておらず
体力的な限界がくるまで、
どこまでも挑戦し続けたい。

WBC WBO

Super Bantamweight
Title Match

フルトンに8回TKOで勝利し

階級の壁を感じずに闘うことができた。

米興行大手トップランク社の
プロモーター、ボブ・アラム氏

これから先、長く語り継がれる試合だった。伝説的な選手になってきている。

WBA IBF WBC WBO

Super Bantamweigh
Title Match

(タパレスは)非常にタフで気持ちの強い選手だった。

どんな闘いが
待っているのか楽しみにしたい。

WBA IBF WBC WBO

Super Bantamweigh
Title Match

34年ぶりの東京ドームで日本人のメインイベント。

皆さんの(応援の)力がパワーになった。

「悪童」と称されるネリが相手だった。

自分はこの闘いに集中していた。

2024年6月6日
井上尚弥はニューヨークで全米ボクシング記者協会による2023年の年間最優秀選手賞「シュガー・レイ・ロビンソン賞」の授賞式を兼ねた夕食会に出席。

The Sugar Ray Robinson Award

今夜、この賞を頂けて光栄です。 この先の自分のキャリアも楽しみにしていてください。

2024年10月21日
WBCバンタム級王者の中谷潤人(M.T)との
将来的な対戦を視野に入れていることを明かした。

PFP1位になりたい若者がいる。その若者が上がって来るのを待つしかない。

2024年11月4日。 サウジアラビア国営の国際娯楽イベント「リヤド・シーズン」とスポンサー契約を結んだことが発表された。総額30億円(推定)の契約。リヤド・シーズンの代表者のトゥルキ氏は「来年、サウジアラビアでビッグファイトをすること」を期待した。

Riyadh Season

限られた選手しかたどり着けない場所だと思っている。

2025年3月31日
24年優秀選手表彰式。7年連続8度目の男子最優秀選手賞の受賞スピーチで、WBCバンタム級王者の中谷潤人に来春の対戦を要求した。

中谷君、1年後に東京ドームで日本ボクシングを盛り上げよう。