鍵山は大の字になって銀盤に倒れた。「全部出し切って体力を使い果たした」。リンクサイドの父、正和(まさかず)コーチはガッツポーズを繰り返し、コストナー・コーチは称賛の拍手をやめない。もがき、苦しみ、ようやくつかんだ初の日本一。「久しぶりに感動して涙してくれた」と、感極まる父をぐっと抱き寄せた。
SPは首位とはいえ、内容はいまひとつ。最終滑走のフリーは直前の中田が好演で重圧をかけてきた。それでも、日本の新エースは揺らがない。課題だったフリップ、続くサルコーの4回転を鮮やかに決め、4回転―3回転の連続トーループも成功。父から仕込まれた滑らかなスケーティングでも観客を引き込んだ。
2連覇していた宇野昌磨(うの・しょうま)が引退し、今季から立場が大きく変わった。周囲の期待を背負い、精神的なもろさを露呈することもあった。それでも「1㍉たりとも弱い部分を見せてはいけない」と練習を重ねることで自信を回復。瞑想(めいそう)も取り入れ「ぶつかってきた壁を乗り越えられそう」と、弱い自分と決別を確信した。
五輪予選を兼ねる来年3月の世界選手権では王者イリア・マリニン(米国)に再び挑む。フリーは4回転で最高難度のルッツを加える予定で「理想はもっともっと高いところにある。新たなスタートとしてやっていく」。親子鷹の挑戦はまだ続く。(品川)