フィギュアスケートの全日本選手権男子で、死力を尽くした鍵山優真は、大の字になって銀盤に倒れた。リンクサイドの父、正和コーチはガッツポーズを繰り返し、コストナー・コーチは称賛の拍手をやめない。もがき、苦しみ、ようやくつかんだ初の日本一。最終順位を確認して「やった!」と歓喜する息子を、涙ぐむ父はぐっと抱き寄せた。
SPは首位とはいえ、内容はいまひとつ。最終滑走のフリーは直前の中田が好演で重圧をかけてきた。それでも、日本の新エースは揺らがない。課題だったフリップ、続くサルコーの4回転を鮮やかに決め、4回転―3回転の連続トーループも成功。父から仕込まれた滑らかなスケーティングでも観客を引き込んだ。
2連覇していた宇野昌磨が引退し、今季から立場が大きく変わった。「鍵山選手ならやってくれるみたいな感じ」と周囲の期待を背負い、精神的なもろさを露呈することもあった。それでも「1ミリたりとも弱い部分を見せてはいけない」と練習を重ねることで自信を回復。瞑想も取り入れ、弱い自分との決別を図った。