【滑走屋・コメント全文】高橋大輔さん「再演だが、完成形というくらい細かいところまでブラッシュアップし、より一層内容の深いものになっている」

 アイスショー「滑走屋」のリハーサルを終え、笑顔で質問に答える高橋大輔さん=ひろしんビッグウェーブ

 フィギュアスケートの元世界王者、高橋大輔(たかはし・だいすけ)さんが制作面を総指揮したアイスショー「滑走屋」の前日リハーサルが7日、広島市のひろしんビッグウェーブで報道陣に公開され、高橋さんは「再演ながら完成形というくらい一層深い内容になっている。スケートを知らなくても楽しめるので、気軽に来ていただけたら」と話した。
 高橋さんとカップルを組んでアイスダンスで活躍した村元哉中さんや元五輪代表の村上佳菜子さん、現役で男子の友野一希(第一住建グループ)島田高志郎(木下グループ)、女子の青木祐奈(MFアカデミー)らも出演する。昨年2月の初演(福岡市)に続く開催で、8、9日に計6公演を行う。村上さんは「スケートを始めたい、もっと見たいと盛り上がっていけばいい」と願った。
 

「ほとんどがバージョンアップ。言い出したら30分くらいかかりそう(笑)」

 ―昨年よりもバージョンアップということで本当にすごい滑走量が増えたなっていう印象なんですけれど、実際どれくらい滑走量が増えたり、バージョンアップしたところがあるのか、逆にあえて去年と同じままにしているようなところ、多分ファンの方は去年と同じもので見たい部分もたくさんあると思うので、あえて残している良さとバージョンアップしたことを知りたいです。

 高橋さん「そうですね、ほとんどバージョンアップしてる気がしてですね。ただ、Cut My Fingers Offなんかは、ほとんど変えていなくてですね、その代わり、スケーターが増えたということで、新しいキャラクターが増えたという感じですね。それ以外の部分は本当にバージョンアップしていてですね。えーと、何かこれ言い出したら30分くらいかかりそうなので(笑)」
 
 「今回新しい試みとしては僕のソロナンバーの前のカルメンのところがあるんですけど、最初は固定で、もともとは3人だったんですけれども、4人にしても面白いんじゃないかっていう話から、それから、公演によって変えた方がいいんじゃないかっていう話になって、じゃあちょっとオーディションみたいなことをするかみたいな話になって、今回この滑走屋内でオーディションをして、そのオーディションで勝ち抜いたメンバーが、そのカルメンのナンバーを滑るという試みをしてきたんですけど。すごくみんなのモチベーションもそこで一つグッと高くなって、より一層、この滑走屋に出るにあたって、一つ気持ち的に引き上がるような景色が見えて、それは今回試してすごく良かったなと思います」
 
 「前回は急に決まったことで、時間がない中で何とか作り上げたところがあったんですけど、前回を踏まえて、前回の反省だったり、もうちょっとこうしたら良かったなっていう思いを今回全力で全部詰め込んだので、やっと再演なんですけども、完成形なのかなっていうくらい細かいところまで、1カ月半、1カ月前くらいからですね、振付の鈴木ゆまさんと、振付に関わってくれるスケーターと一緒にどんどんブラッシュアップしてですね、より一層内容の深いものにはなっているのかなと思います」
 
 村上さん「私は本当に練習から参加させてもらった立場なんですけど、その立場から考えると、動きは同じような動きをしてるんですけど『ここを押せるよね』『ここは滑れるよね』っていうところは全部、今回は滑るようになっているので、ファンの皆さんとか、もう一回見たいと思う方は、似てるような動きが入ってると思うんですけど、スケールが全然違うというか、前回よりはダイナミックな、風を感じるような滑走屋にレベルアップしていると思うので、前の動きもあるなっていうところもあれば、すごいスピード感!って感じるところとか、いろんな部分があると思うので、そういったところは、前回も見てる方は、ここが変わったんだっていうのを発見しながら見てもらえると、また楽しいんじゃないかなというふうに思います」 
 

若手には「氷上での身体表現にはいろんな見せ方がある、という気付きを持って帰ってもらえたら」

 ―このアイスショーには多くの学生アスリートが参加されていて、とても貴重な機会になっていると思います。起用している狙い、何を持って帰ってほしいか、どんなことを感じ取ってほしいか。
 
 高橋さん「そうですね、結構本当に作っていく上で、かなり細かく作っていてですね、普段彼らは一人で、ソロで滑ることがほとんどで、誰かと何かを合わせてだったりとか、誰かと何かを表現する、誰かと何かで世界観をつくっていく、だったりということは、多分普段はしていないんですけれども、この滑走屋は本当に難しいテクニックといったところは、ジャンプもそうですけど、スピンもそうですけど、多分、見てください、あんまり入ってないんですよね」
 
 「今のスケートの状況というのは、どれだけテクニックがあって、といったところがトップに行く上では必要だと思うんですけれども、それだけではなく、やっぱりスケートって滑る。滑って氷の上で見せるっていったところも、それと同様にすごく大切で、そういった体、身体表現、氷の上での身体表現って、テクニックでも見せられるし、そういったところでも見せられるし、いろんな見せ方があるんだよっていう気付きを持って帰ってもらえたらいいなっていう思いは一番あって」
 
 「その中で結構、普段スケートであんまりカウントで取ったりとかしなくて、音楽で取ったりするんですけど、やっぱりみんなで合わせると、カウントで取って合わせていかないと合わせにくいだったりとか。この曲はこういうカウントをしているとか、この曲は同じ8カウントを取るんですけど、速く8を取るのか、ゆっくり8を取るのかっていうのが、曲の中で、この曲を速くとった方がこの世界観を出せるんだとか、そういうのが振り付けをしている中で、当たり前のように入ってくるんですけど、それを知った上で自分自身のナンバーとか滑ってみると、やっぱりリズム感が変わってきたり、そういうところにつながってくるなと感じているので、そういう違うアプローチでのスケートへの取り組みの一つのきっかけになるんじゃないかなと思いますし、エンターテインメントとして見せるってことはこれだけ厳しいことがたくさんあるんだよっていうのを、多分この滑走屋はかなり、振付の鈴木ゆまさんはじめですね、かなりこだわりがあるので。そこでエンターテインメントの厳しさだったりとか、お客さまに見ていただくにはこれだけの準備をしなきゃいけないんだとか、それ多分試合に向かうにあたっても同じことだと思うので、そういったところを学んで持って帰って、次の練習に、何かのプラスになってくれたらうれしいな、というふうに思います」
 

高橋さん「ソロは間、緩急により一層、気をつけるように滑っている」

 ―春瀬さんは、実際にリハをご覧になってみて衝撃を受けたとか、面白かったとか、感動したというような滑りがあれば教えてください。高橋さんと村上さん、それぞれご自身のソロプログラムについて、どういったところが見どころになるのか、どういったところを気合入れてやってきたのか教えてください。
 
 春瀬さん「息をのんでいるうちに、あっという間に終わってしまったっていうくらい引き込まれてしまって、本当にずっと思っていた感想は、目が足りないっていう、ふふ(笑)感想で、本当に皆さん(動きが)そろっているんですけど、よく見るとそれぞれものすごい個性的な動きをされていて、それを目で追っているうちに、あ、でもこちらの方も素晴らしい動きをされている、みたいな感じで、それぞれに目が行ってしまって。でも本当にたくさんのスケーターさんがいらっしゃるので、全然追いつかなくて、翻弄されているうちに、あっという間に演目が終わってしまっていた、みたいな感じで、それがやっぱりノンストップの75分の魅力なんじゃないかなと思っています。魅力にリハーサルでやられてしまいました」
  
 村上さん「私のソロは、前回と私は曲を変えて、新しい曲で今回参加させていただいたんですけど、ちょっと今まで滑ったことのないようなジャンルだけど、滑ったことあるようなジャンルというか(笑) すごい表現が難しいんですけど、もう30歳になって、ちょっとまた10代の頃、20代の頃の自分と違った殻を破った、そんな表現にチャレンジしていて、今回はフルでいったん、陸でダンサーさんに振り付けしてもらったものをオンアイスに載せているので、かなり踊りとか足の運びとか難しかったりもするんですけど、すごくそれがやりがいがあって、すごく滑走屋にも溶け込んでいるような、でも自分の魅力も出せるような演目っていうのを大ちゃんが選んでくださって、こういうふうにできているので、足を引っ張らないように頑張りたいと思います」
 高橋さん「すてきですよ」
 村上さん「ありがとうございます」
   
 高橋さん「僕は前回のソロとは変えていないんですけど、前回は、この滑走屋に向けて力を入れ過ぎて、自分のナンバーをほとんどできていなかったという中で、流れていくうちに自分自身の最終のソロが来るといったところで、より一層、テクニックという部分では、難しいことはしてないんですけれども、曲を表現するという上で、間であったりとか、緩急であったりとか、何かそういったところは、より一層、気をつけるように滑るようにはしていますし、今回、僕の滑る前のカルメンで人数が増えた分、より一層そこからのパワーに負けないように滑らなきゃいけないというところがあって、ちょっとヘロヘロになってるんですけどね、今ね(苦笑)」

 村上さん「ほぼ2曲滑ってるみたいな、ね」
 
 高橋さん「そうです。すごいエネルギーで、みんなが、僕の前のメンバー達が来てくるので、それに負けないよいように、今日はへばったんですけど、明日から全力でいきたいなと思っております」
 

「アンサンブルスケーター、滑走屋のキャストとして長く携わってくれたらうれしい」

 ―高橋さんに質問なんですが、今回新しくメンバーが加わっていますけれども、このショーに出るために、これから出たいなと思っている方たちに、高橋さんの選ぶポイントというか、それがあったら教えていただけたらと思います。

 高橋さん「え!?難しいですね。そうだよね(苦笑)まず一番最初に滑走屋をやるというところで、力強さだったり、スピード感だったり、そういったところを一番メインに考えてスケーターっていうのを、1回目の時に選ばせていただいたので、その中で、そこはやっぱり一番、まさに再演ということで、そういったところはメインに考えては選びましたし」
 
 「あとは結構作る前から、こういうものをやるっていう前から選んだので、前回作り上げている上で、結構かなり踊ったりとかする部分もあるなと思って、そういう表現がすごく上手だったり、すごく力強さだったり、何かこの子、これを経験したら伸びるんじゃないかなっていうものであって、何か持ってそうだな、みたいな、そういう試合だけなんですけど見させていただいて、その中にポテンシャルがあるんじゃないかなっていう、今後この滑走屋、僕自身もできるだけ長く続けていけたらいいなと思っているので、今どうっていうよりかは、今後変わってくるんじゃないかなっていう思いで、何か見させていただいて、その滑走屋のキャストとして長く携わってくれたらうれしいなっていう思いで、選ばせていただきました」
 

「26人でイゴイゴ動いている」

 ―広島で上演されるということですけれども、この場所でやられる意味や思いなどについて、お三方からいただけますか?
 
 春瀬さん「高橋さんが岡山のご出身で、私も香川の出身で、中国地方はすごく愛着のある地方でもありますし、やっぱりそこからすてきなスケーターさんがどんどん生まれてほしいって思うので、近所だから行ってみようかな、みたいな子どもたちだったりとかが、広島のこの場所でスケートを見て、例えばスケートを始めてみたり、アイスショーに出たいからもっとスケート頑張ろうって思ったり、そういうキッカケになればいいんじゃないかと思っています」
 
 村上さん「私は名古屋出身なんですけど(笑) 私たちが合宿で使わせていたいた松山のスケートリンクも、2027年に閉鎖してしまうということで、スケーターたちにとっては、スケートリンクがなければ練習ができないというスポーツで、いろんなところの、こういった素晴らしいリンクがあるところで、最上級、最高級のアイスショーができることで、また地元のみんな、子どもたちだったり大人の皆さんが、もっと多くの人が見に来てくださることで、スケートを見て始めたいと思ったり、もっと見たい、ファンになりたいって思ってもらえるきっかけに、このショーがこの広島で行うことでなって、スケート界がもっと盛り上がっていけるといいなというふうに心から思っています」
 
 高橋さん「はい、僕もやっぱり、ずっとスケートに携わってきてですね、テレビでは見るけど、一歩足を踏み出すとなると、若干敷居が高いのかなっていう印象を感じるというか、僕は演者側なんですけど、そういう人が多いだろうなという思いが、より身近なエンタメとして、この滑走屋に触れ合ってほしいなって。そういった中でいろんなことを考えつつ、もっと来やすいようにするには何だろうっていうのはすごく考えて、そういったところで、やっぱり東京であったり、大阪であったり、名古屋であったりといったところが結構多いと思うんですけれども、メイン都市というか、それ以外でアイスショーが身近なものっていうのはなかなか触れ合う機会がないので、そして、広島だったら、なんとか四国から車で来られるし、中国地方の島根、鳥取、山口、岡山とか、メインアクセスとして一番いい場所なんではないだろうかっていう思いで、広島でやらせていただくことを大きくさせていただいたんですけど」
 
 「広島に限らず、中国地方の方にも見ていただきたいなと思い、広島を選ばせていただきました。今日見ていただいた通り、誰がどこで何を滑っているか分からないとことで、でも、このスケートってこんなことできるんだ、こんな、何て言うんですかね、この26人でこう、こういう、何かすごい、イゴイゴ動いている、何て言ったらいいんだろう。けど、何かそういう見せ方もあるのか、知らなくても何かこう、楽しめるんじゃないかなっていうのを、ゆまちゃんも作ってくださったので。一つのスケートっていうものを生で見る、軽い気持ちっていうか、気軽な気持ちですね(笑)気軽な気持ちで来て頂け、頂きたいっていう思いが一番多い。全然、スケートのこと全く分からなくても全力で楽しめると思います」

アイスショー「滑走屋」のリハーサルを終え、笑顔で質問に答える村上佳菜子さん=ひろしんビッグウェーブ
井上 将志

この記事を書いた人

井上 将志 (いのうえ・まさし)

2003年共同通信入社。名古屋でプロ野球中日、フィギュアスケート、本社運動部でフィギュア、体操、東京五輪組織委員会を中心に担当。五輪は10年バンクーバーから夏冬計7大会を取材した。ジュネーブ支局時代は欧州を中心に世界各地をカバー。東京都出身。