「めっちゃ泣きました。フフフ」 鍵山優真 フィンランド大会一夜明け取材

 男子優勝から一夜明け、取材に応じる鍵山優真=17日、ヘルシンキ(共同)

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 (取材場所に到着し) 「何しゃべろうかなー」
 ―フリートークでもいいですよ。
 「いやいや、さすがに進行は苦手です(笑)」
 ―お疲れさまでした。昨日の演技後はどう過ごされましたか。
 「とにかく疲れちゃったので。試合期間中は集中していたので、そんなに2戦の疲れみたいなのは感じていなかったんですけど、フリーが終わってホテルに帰った途端に集中力が一気にどばっと切れて。一気に眠気と疲れがきちゃったので、普通に寝ていました。でもご飯を食べてから寝ました」
 ―疲れは知らないうちにきていた。
 「そうですね。アドレナリンもあったので、それが試合が終わって一気に開放されて。2戦の疲れがきてしまったのかなと思うんですけど。でも試合中に疲れがこなかっただけ、まだ良かったなと思います」
 ―一夜明けて昨日の演技をどう振り返りますか。
 「ちょっとファイナル進出のことだったり、NHK杯でも300点を超えられたので。この試合で自己ベストを更新できるような演技を考えながらやっていたので、そこでちょっと若干の不安感というよりかは緊張感があったので。それが気持ちの弱さが出てしまったのかなと思いますし。技術うんぬんとかの話ではなくて、自分の気持ちの弱さが前面に出てしまったパフォーマンスだったと思うので。そこが、いつもと違うところだったと思います」
 ―悪かったところは見えてきましたか。
 「さっき言ったことが全てなんですけど、6分間(練習)まではすごくいい状態で来られたんですけど、でも、どうしてもスタートポジションに立ってからどうしても緊張もありましたし、優勝もしなきゃいけないということも考えていたので。自分のいつも通りの演技をするということよりも、それ以上にたくさんの余計なことを考えてしまったりもあったので。そこから最初のフリップのミスにつながったと思いますし、フリップのミス自体も、あまり今までにないような抜け方をして。そこからの焦りだったりとか、自分の集中力も一気に切れてしまった感じがしたので、そこから細かいミスが続いてしまったと思います」
 ―昨日に終わった後に裏で泣いたという話も。
 「(笑)めっちゃ泣きました。フフフ」
 ―自然と涙が出た。
 「いや、何か(演技が)終わってから(コーチの)父と話をして反省会をして。何が悪かっただろうというのを反省会をしてから。そこでいろいろと思い出しちゃったというか、演技が終わった直後は集中とかしていたのでそんなに『うわー、やっちまった』くらいにしか思っていなかったんですけど。いろいろと考えて、めっちゃ悔しくて泣いちゃって。泣いていいのか分からない演技をしたのに自然と涙が出てきて、めっちゃ枯れるまで泣きました」
 ―それは演技が終わってから表彰式の前。
 「表彰式の前?プレカン(記者会見)の前です。プレカンに行かないといけないのにもう…。もう、すごい悔しくて。やっぱり自分はすごく頑張って練習をしてきたつもりだったし、NHK杯から期間は短かったですけど、反省するところはしっかりとして調整もしてきたつもりだったので。初日のショート(プログラム)も良かった時点で、行けるぞと言う時に、今までで多分一番ひどいというか、こんなに崩れることが僕はあまりなかったので」
 ―シニアになってから国際大会では一番悪い点数みたいです。
 「そうですね。頭がぐちゃぐちゃになっちゃって、悔しくて泣いちゃいました」
 ―お父さんとの反省会の最中に泣いたのか、終わってからか。
 「終わってから、あーと思って。フフフ。自分でも何で泣けてきたのか全然、分からないですけど。でも、もう泣かないです」
 ―そんなに泣くのは珍しいですかね。
 「そうですか?まあそうかもしれないですね。自分でもよく分からなくなっちゃって。明確なミスとかだったら、1本だけのミスだったら分かるんですけど。パフォーマンス全体を通しての悪いパフォーマンスだったので。自分の気持ちの弱さが出てしまったのかなと思います」
 ―お父さんからは何と言われたんですか。
 「今、言ったことですね。気持ちの弱さが出ちゃったと。技術とかじゃなくて、僕の悪いところが全部出てしまったねと。(4回転)フリップもまだ今シーズンは1本も成功させられていないから、その部分はまだまだ練習が足りなかったとも言われたので、本当におっしゃる通りです、と。素直に受け止めました」
 ―演技中の滑っている時の記憶はあるか。
 「いつもはすぐに忘れちゃうというか、すごく集中しているので。どんなんだったっけ、となることが多いんですけど。昨日に関してはめっちゃ嫌なほど覚えていて。ヘヘヘ。嫌な記憶の方が思い出しやすいんですかね。フフフ。すごく明確に覚えていますし、最初のフリップの時点で心が折れそうになったりとか。サルコーも自信を持って練習して今シーズンもたくさん跳べていたりしたので、今までにないようなミスの仕方をしてしまった時点で何回も心が折れそうになったんですけど。何かそのミスはあったんですけど、本当に、とにかくたくさんのヘルシンキに来てくれたお客さんの温かい声援だったりとか拍手のおかげで、最後まで丁寧に滑れたので良かったです」
 ―嫌な記憶はホテルに帰ってもフラッシュバックしましたか。
 「しっかりと反省はしなければならないので。とにかく自分の何が悪かったかを反省しなければ次に進むことはできないので。とにかく一個一個の課題をしっかりと見つけ出していました。本当に昨日は自分の中での最低を味わったので、もう前に進むしかないと思っているので、今はそんなにネガティブな感じじゃないですけど。ファイナルまであと数週間しかないので、とにかく全力で突き進んでいきたいと思います」
 ―鍵山さんの成績なら優勝にこだわらなくてもファイナルに進めるし、その先にもつながると思うが、そこにこだわる理由は。
 「優勝にこだわるというよりは、この2戦でファイナルに向けて上っていきたかったんですけど、下がっちゃったので。そっちの方が悔しいというか。優勝はもちろんうれしいですけど、優勝というよりは、この演技でファイナルに進んじゃうのが自分としては不完全燃焼という感じだったので。そっちの方がすごく悔しかったですね」
 ―フリーのプログラムは前半オーケストラで後半は軽いギターのミュージック。上半身のアクションも。チャレンジングなことに取り組んでいるが、スケーターとしてパフォーマンスの幅を広げられているという感覚はありますか。
 「ショートもフリーも別の難しさがありまして。ショートはそんなに曲が盛り上がらない中で自分の滑りでいかに物語を伝えるかというのがすごく大事になってきたりとか。フリーに関しても前半と後半のメリハリというか、前半は、よりゆったりの曲調でモダンな動きだったりとかというのが多い中で、後半はすごくフラメンコだったりスパニッシュみたいな曲調になってくるので。そこのメリハリをつくるのが最初はすごく難しかったんですけど、試合だったり練習を通して曲の意図だったり、イメージというのを少しずつつかめているような気がするので。それが試合になると、手拍子も相まって盛り上がるプログラムになってくると思うので、自分自身としては練習してきたものをそのまま出すという思いでやっていますけど、お客さんのたくさんの手拍子があることでよりレベルアップされるというか、完成されるのかなと思うので。僕自身だけではなくて、皆さんと一緒につくっているような気がして。昨日は悔しい思いはたくさんありましたけど、そういった時間は自分の中では特別というか、すごく楽しかったと思います」
 ―ジャンプの出来栄えを中心に向き合ってきたこれまでとは、また違う引き出しを手にできた。
 「すごい難しいんですけど、もちろんジャンプは全部決めたいですけど、ジャンプだけじゃない、何と言えばいいのか難しいな。表現ができない。難しい」
 ―パートではなく全体で引き込む。
 「僕は昨シーズンから表現力という部分も意識しながらやっているので、そういったところで、ステップで盛り上がったり、コレオ(シークエンス)で盛り上がったりというのは自分の中でうれしいことですし、いろんな方から、すごく格好いいねとか言われるのが、すごくうれしいので。もっともっと今度はジャンプもノーミスして自分の最高のパフォーマンスを見せたたり、やっぱりジャンプもそろっての一つの作品だと思うので。しっかりと次はジャンプを決めたいと思います」
 ―1人暮らしはどうですか。
 「探り探りやっています」
 ―気づきはありますか。
 「意外と大変だなと。1人の時間をつくれるのかと思って、1人の時間というか1人でゆったりする時間をつくれるかと思ったら、意外にやることが多くてゆっくりできない(笑)」
 ―何が大変ですか。
 「いろいろですね。全部、自分でやらないといけないので。練習から帰ってきて、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃみないなことが多かったりするので。意外とやることがあります」
 ―部屋もきっちりされているんですか。
 「僕は自分で言うのもあれかもしれないですけど、きちょうめんな方だと思うので。けっこう整頓はしていますね」
 ―次のファイナルに向け、五輪プレシーズンで去年との位置づけの違いはありますか。
 「去年との違いについては、去年はけが明けでファイナルに進出できたらいいなというレベルでの感じだったのであれなんですけど。今年はファイナル進出はもうもちろん目指していて。昨年よりいい結果、いいパフォーマンスを目指しているので。そこが去年との違いかなと思いますし。まあイリア(・マリニン)選手とアダム(・シアオイムファ)選手。アダム選手は中国杯次第でファイナルが決まりますけど。イリア選手とはファイナルでロンバルディア杯以来、一緒の試合に出ることになるので。彼が4Aを入れてくるのかどうかはまだ分からないですけど、とにかくグランプリよりはいい演技をしてくるのは間違いないと思うので。僕もここでとどまらずにもっともっと、ジャンプもいいものを跳んだりとか、ステップももっともっとより良いものにしていかなければならないと思うので。少しでも自分の理想に近づいていけるように、イリア選手に近づいていけるように頑張りたいと思っています」

男子優勝から一夜明け、取材に応じる鍵山優真=17日、ヘルシンキ(共同)
吉田 学史

この記事を書いた人

吉田 学史 (よしだ・たかふみ)

2006年共同通信入社。仙台などの支社局で警察や行政を担当し、12年から大阪運動部でスポーツ取材を始めた。2014年12月に本社運動部へ異動して水泳、テニス、フィギュアスケートを担当し、五輪は2016年から夏冬計4大会を取材した。2022年4月からジュネーブ支局で国際オリンピック委員会や五輪の準備状況を追う。東京都出身。