フィギュアスケートの会場に足を運んで観戦すると、生でしか感じられないスピードや迫力、そこにいなければ感じられない独特の張り詰めた雰囲気がある。テレビでは選手の細かい表情であったり、解説を聞きながら採点付きで演技を見たりと、素晴らしい環境がそろっている。それでも伝わりきらない良さを知ってもらうため時には会場に足を運んでほしい。
私が競技者だった時、日本のフィギュアファンの素晴らしさを感じる瞬間が何度もあった。最も印象的なのが、2014年にさいたま市で開催された世界選手権。自分の演技に合わせて会場中に響き渡るピタリとそろった7拍子の手拍子をリンクで聞いた。試合中にもかかわらず、滑りながら感動したことを鮮明に覚えている。
もちろん日本開催で地元選手への声援が大きくなるのは必然だが、日本の観戦者は、目当ての日本人選手が終わったからといって帰ってしまうわけではない。各選手の国旗を取り出しては、一人一人を応援し楽しむ。その光景は日本人選手としてうれしい。
五輪会場以外であれだけ次々と、さまざまな国旗が揺れているのは日本だけだ。この光景を目の当たりにして、日本で演技するのが大好きとなり「日本のアイスショーでどうすれば滑れるか」と聞いてくる外国人選手も少なくなかった。
競技を引退しスケート界を応援する身として、応援がいかに競技への力になっていたかを改めて感じ、感謝している。日本のフィギュアファンは世界一。ぜひ、この世界一の光景を日本スケート界の文化として、今後もつないでいきたい。(フィギュアスケート元五輪代表)
2017.11.30