オリンピックに向け成長を重ねるいのりのこれから 夢のアニメ化、「プロデューサーみたいな気持ちで頑張りたい」

 「メダリスト」の作者つるまいかださんへのインタビュー。2024年1月に始まったアニメ作品では監修者として関わり、幅広い世代に見てもらえるような工夫もしているそうです。また連載が続く原作の漫画では、ジュニアクラスとなったいのりが、オリンピック出場への夢を叶えるため、これからどのような成長を遂げていくのでしょうか。インタビューの締めくくりには、フィギュアスケートファンへのメッセージもいただきました。


つるまいかださん【上】はこちら
「難しそう」から始まった採点競技の面白さ
 テレビアニメ「メダリスト」の原作者に聞いた
 フィギュアスケートの魅力
つるまいかださん【中】はこちら
フィギュアスケートと同じくらい重要なテーマ
 「子どもと大人の関係」を描く
 コミュニケーションに対峙し続ける難しさ

©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

「メダリスト」は…

 講談社の月刊青年漫画誌「アフタヌーン」で連載され、アニメ版は2025年1月4日からテレビ朝日系“NUMAnimation”枠にて放送中だ。

 物語は、「氷の上では別人になる」小学5年生の結束(ゆいつか)いのりが主人公。アイスダンスで全日本選手権に出場経験のある青年・明浦路司(あけうらじ・つかさ)と出会い、才能を見いだされるところから始まる。
 中学生でフィギュアスケートを始めた司は、不遇な環境でスケートを続けて挫折。スケートを始めるのは小学生でも遅いと言われる世界だが、そんな「常識」を覆し、2人は共にオリンピックの金メダリストを目指して挑んでいく…。

漫画よりアニメを好きと言ってもらえたら

©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会

 ー今年1月、つるまいかださんが漫画家になった時からの「夢だった」というアニメ化が実現。新たなファンからも支持され、人気を呼んでいる。アニメ製作の過程では自ら監修者として関わってきた。

 「できあがった動画を見た時はやっぱりすごく感動しました。アニメって、一枚一枚の絵が全部手書きで、それで一つの場面ができるんです。もちろん最近はCGなどの技術も発達しましたが、本質的にはどこかの誰かが一生懸命描いてくれてることには変わりはない。日本ではない、遠くの国の誰かが書いた一枚だったり。それが何度も積み重なり、一つの作品が完成するんです。そこに感動的なものがありました」

 ー漫画版は「月刊アフタヌーン」で連載中。大人向けの青年誌だが、アニメ版では幅広い世代が見ることを想定し、工夫もしている。

 「アニメ版ではどんな年代の人でも見てもらえる内容にしたいと思っていました。製作の皆さんは私がお伝えしたことを真剣に受け止めてくださっていると感じます。具体的には、司といのりの関係性を大切に描いているので、アニメでもその関係を崩さないようにしてほしいとお願いしました」

 ーアニメ製作陣には、作品を見ることで想像されるストレスにも気を配ってもらっている。物語の最初の方では、いのりの母親が、なかなかいのりがスケートをすることに賛成せず、どうすることもできないいのりが苦しむ場面もある。

 「大人向けの漫画版ではお母さんの性格がきついところがあって。大人の読者であれば、そういったキャラクターに耐えられますが、小学生や中学生からすると、ああいう怖いお母さんはいやだと感じてしまうかもしれない。逆に母親の目線に立つと、小さな子が苦しい思いをするのは見ていられない、と思う可能性もあります。物語の軸がずれないようにした上で、脚本に柔らかさを出していただいています」

 「アニメ制作スタッフの皆様に対しては、『メダリスト』という大きな船に一緒に乗ってくれている乗組員のような気持ちです。今はアニメを見た方々が『漫画よりもアニメが好き』と言ってくれるようになるとうれしいです」

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。