フィギュアスケートと同じくらい重要なテーマ「子どもと大人の関係」を描く コミュニケーションに対峙し続ける難しさ

 フィギュアスケートを題材にした、大ヒット漫画『メダリスト』の作者つるまいかださんのインタビュー。今年1月からアニメ放送も始まった。シニア、ジュニアではなく、年少クラスのノービスから始まる物語は、コーチと子ども、親と子といった習い事の世界における子どもと大人の関係性も重要なもう一つのテーマに据えているといいます。その真意とは?

「メダリスト」作者 つるまいかださん【上】はこちら
「難しそう」から始まった採点競技の面白さ
 テレビアニメ「メダリスト」の原作者に聞いた
  フィギュアスケートの魅力

「子どもたちの心身をどうやって守れるのか考え、取り組んでいる方ばかりだった」

ⓒつるまいかだ/講談社

 ―物語は、オリンピックのメダリストになるために挑戦を続ける、結束(ゆいつか)いのりと明浦路司(あけうらじ・つかさ)が主人公で、子どもと大人の関係を軸に進んでいく。フィギュアスケートのクラブを取材を重ねる中で、大人と子どもの関係性を重視するようになった。

 「取材でお世話になったスケートに携わる方々は、子どもたちの心身をどうやって守れるのか考え、取り組んでいる方ばかりでした。その感動を物語に入れたいな、と思って。フィギュアスケートというスポーツの題材と同じぐらい、その関係を重視するようになりました」

 「スケートを習う生徒と、教えるコーチとの関係、子どもと親の関係。フィギュアスケートに限りませんが、習い事の世界には、大人と子どものコミュニケーションに対峙し続けなければならない難しさがあります。大人と子どもが一緒になって何かを高めようとした時、どうやって進んでいこうかという悩みがどこのクラブにもあり、真剣に試行錯誤されていました」

 「ピアノのおけいこなどもそうかもしれませんが、小さな頃からずっと続ける習い事って、子どものモチベーションをどうやって維持できるか、難しい面もあります。一方保護者の側にも、子どもに習い事以外の遊びをさせなくてもいいのかという葛藤もあります」

 「子供に『特別な何かになるために頑張れ』って言う家族は、取材させていただいた限りではあまりいないなと感じました。子どもが自分でやりたいと言い出したスポーツをどうしたら本人が納得できる形で続けながら、素晴らしいものになるだろうかと、支えるご家族側も考えているのだと思います」

 「日本のフィギュアスケートのレベルは本当に高い。自分の子どものすぐ隣に、将来世界の頂点になるレベルの人がいるかもしれない。あるいは自分の子ども自身がそうかもしれない。でも誰だってすぐには上達しない中で、どうしたら楽しむ気持ちを忘れず、人生を振り返った時、大切な時間を費やしたことに誇りを持てるスポーツとして続けていけるか。保護者の方々はそういうことにも悩みながら、お子さんを応援しているように感じました」

前山 千尋

この記事を書いた人

前山 千尋 (まえやま・ちひろ)

デジタルコンテンツ部記者。2007年入社。青森、京都支局を経て、文化部で美術や建築、教育、ジェンダー問題などを担当してきた。山梨県出身。